金融機関(ネット銀行)による司法書士指定について
はじめに
私蓑田は、ネット銀行等によるローンの司法書士指定の問題を是正するための活動を行っており、このページではその活動について掲載しています。動機として当初は1消費者としての怒りからでしたが、次第に元銀行員として、商学部出身として、また士業の端くれとして使命感のようなものが芽生え、頑張ることとなりました。
経過
2022年 | 10月 | 福岡簡易裁判所に提訴 |
2023年 | 1月 | 福岡地方裁判所に移送 |
2024年 | 4月 | 一審判決 |
5月 | auじぶん銀行の借換住宅ローン抵当権設定登記において司法書士指定条件の削除 | |
福岡高等裁判所に控訴 |
スキーム図
下図はauじぶん銀行などのネット銀行が行っていた司法書士法人エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)をつかった司法書士指定のスキーム図です。
資料
声明
〈2024年5月1日〉
auじぶん銀行の借換住宅ローン抵当権設定登記において司法書士指定条件が削除されており、活動の成果が徐々に出てきています。また、1審の誤解と審理不尽を問うべく福岡高等裁判所に控訴しました。
〈2024年4月24日〉
1審判決では、銀行は司法書士法人エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)のスキーム(下図①~③)を関知していなかったこと(および関知していなかったことについて責任がないこと)が認められるなどした結果、独占禁止法の高いハードルを越えることができず金銭奪還を果たすことはできませんでした。しかしこのスキームについて
①競争原理をより適正に働かせる取引方法もあるなかで、そのような方法を顧客に与えなかった点、
②銀行が本来支払うべきコストを顧客に転嫁しているとみる余地がある点、
③本件の取引における担当司法書士法人が、銀行が委任した司法書士法人EAJからの復委任を受けたものであり、担当司法書士法人が顧客から受けた司法書士報酬の一部をEAJに分配し、それにより本来支払う必要のない費用を顧客が支払うこととなった点、
④および顧客がこれを知る機会がなかった点
といった本件でのスキーム全体の不当性に関して、「本件司法書士指定の意図・目的の正当性については疑義がないとまではいえない」(11ページ4~22行目)と評価され、本件スキームの不当性を訴えたいという当方の目的を一定程度達することができました。
このうち、③に関しては、司法書士行為規範12条(不当誘致等)における、紹介を受けたこと、あるいは紹介をしたことによる対価との関係で、大いに問題があると考えています。
さらに、④に関しては、顧客は、自身が依頼した司法書士がその報酬がどのように使われたか、特にEAJに対してどのような名目でどのような金額が支払われたことを知る機会がないままに取引が進んでいくのであり、今回のように、紛争化して初めて明らかにあることも多く存在しました。そのことから考えると、司法書士行為規範22条(報酬の明示)において、要請される、報酬及び費用の金額またはその算定方法の明示は本件において全くなされておらず、このようなスキームによっているネット銀行をはじめとした金融機関との全ての住宅ローンに関する手続きにおいて、顧客は知らぬ間に不要な支払いをさせられている可能性が高いです。
この事件を機に、銀行には、当該スキームに原理上及び司法書士行為規範上大きな問題があることを踏まえ、判旨にあるような別途の方法をとる選択の余地を用意するよう整備することを求めたく、また、全国の司法書士会、および法務省においては、このようなスキームが用いられていることを調査確認の上、関係している司法書士らに対し、適切な対応を行うことを求めます。